変わりゆくデザインと、変わらない魅力。近沢レース店の歴代麻日傘をご紹介!
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- 2024.05.27.
みなさま、こんにちは。オンラインショップスタッフのひとみです。
5月に入って、すっかり夏のような強い日差しが照り付けるお天気が増えてまいりました。実は、4月から5月にかけて、シミやシワの原因となる紫外線量は年間でも最大量降り注いでいるのだとか。
暑くなる前からぜひ日傘をお使いいただきたいところですが、せっかくなら気分もあがる素敵な日傘にめぐり合いたいですね。近沢レース店の麻日傘は、おかげさまで夏を迎える前から完売する人気商品でございます。せっかくですので、この機会に歴代の日傘のデザインと、最新の日傘をご紹介いたします。
はじめに
近沢レース店は、1901年(明治34年)、絹の輸出商として創業いたしました。生糸の貿易が盛んだった横浜にも拠点を据えており、その後、西洋文化の発信地であった横濱元町で、日本では珍しかったリネンストアーに転進することとなります。
リネンストアーの開業後は、店頭に麻生地を置き、外国人のお客様向けに、テーブルクロスやベッドリネン、ハンカチ、夏には開襟のブラウスなどをオーダーメイドでお作りしていました。当店が、麻の日傘や、麻のブラウスをいまでも取り扱っているのには、このような背景があります。
はじめは中国から輸入した日傘を取り扱っていましたが、徐々にオリジナル商品に注力するようになり、いまでは世界から最適な技術を選択又は融合させたレース・刺繍の美しさ、温もりをお伝えする商品を手掛けています。
日傘についても、京都にある「小野内商店」さまにしかできない技術でもって、近沢レース店の日傘は完成します。宜しければぜひインタビュー記事もご覧ください。
ここからは、歴代の日傘を振り返ります。
「バテンレース日傘」
近沢レース店の初代日傘は、残念ながら現物が残っていませんでした。当時を知るスタッフからの話しでは、はじめは日傘の縁にさりげなく「バテンレース」を用いた日傘を作成していたそうです。「バテンレース」とは、リボン状のテープと、刺繍を組み合わせたものをさします。
さりげなくレースを施した日傘から、日傘全体に「バテンレース」を使用した日傘を作成するようになり、よりレースを感じられるデザインへと進化していったようです。むかしもいまも、〝よりよい商品をお届けしたい〟という想いで、常に試行錯誤する姿勢は変わりません。
「カットワーク日傘」
「バテンレース」を用いた日傘の次は、「カットワーク」の日傘の時代がやってきました。当時、こちらの高級テーブルクロスを大層お気に召してくださったお客様から、ぜひ日傘も作って欲しいとご要望いただき、特別にオーダーメイドで日傘用の生地をお作りしたこともあったようです。
当時でも約10万円ほどになる高級日傘でしたが、現在は職人さんの数も激減し、同じものを作ろうとしても5倍以上の費用が掛かると思われます。いまでは貴重な、手仕事ならではの特別な逸品でございました。
日傘はこのように、木型に併せて裁ち包丁で一枚一枚生地をカットし、縫い合わせていきます。例えば8間(けん)の日傘を作るのであれば、この型に合わせて8枚分の生地を裁ち包丁でカットするのです。どうやったら綺麗に張りのある日傘になるか、小間(こま)同士のデザインがぴったり合わさるかなど試行錯誤して職人さんが仕上げてくださいます。
「手刺繍日傘」
「カットワーク日傘」のつぎは、「手刺繍日傘(ベトナム刺繍)」の時代がやってきました。「ベトナム刺繍」は、「フランス刺繍」から派生した、ヨーロッパの美意識を感じられる技法です。
時には1,000色近い色糸を使用するとされる写実的な「ベトナム刺繍」は、時が経ったいまも、うっとりと見とれてしまうほどの仕上がりです。まさに、職人技の光る美しい刺繍は、まるで絵画のよう。こちらもいまでは職人さんがほとんど存在しなく、手刺繍の魅力があふれる貴重な一本です。
「チュールレース日傘」
繊細な模様が目を引く、「チュールレース」。そもそもチュールとは、六角形の編目のことをさします。この六角形をベースに刺繍を施すため、仕上がりは可憐な模様が浮き上がります。
いまでも近沢レース店の晴雨兼用日傘などにも多く用いられるレースです。最近はギュピールレースのシーズンタオルタオルハンカチがほとんどですが、タオルハンカチでも「チュールレース」は大変好評でございました。
こちらは、19世紀につくられたアランソンレースを、「チュールレース」で再現したデザインでした。アランソンレースはときに糸の女王と呼ばれるほどの美しさ。クラシカルでエレガントなデザインは、ひざ掛けハンカチとしても当店で長く愛されたデザインでした。
「リバーレース日傘」
創業120周年を記念して、高級ラインとして数量限定でおつくりしたのが、「リバーレース日傘」。世界で200台しか存在しない機械と、それを操作する熟練した職人の技から織り上げられた、とても優美な最高級リバーレースでした。
こちらもまた、京傘の伝統技法を有する「小野内商店」さまにご協力いただき実現した、貴重な逸品。上質なフランス製のタッセルをはじめ、細部にまでこだわり抜いたその美しさは、まるで芸術品。いまではなかなかお作りの難しいアイテムです。
「ギュピールレース日傘」
むかしから近沢レース店を知ってくださっている方は、このような日傘のイメージが強いのではないでしょうか。はじめは、ホワイト、ブラック、サックスの生地にさりげなくレースを施すデザインが多かったようです。当時はシリーズ名もない時代でしたが、オリジナルレースを開発していくに従って、シリーズ名にもこだわっていくようになりました。
入社時から、この日傘をいまでも毎夏大切に使用しているというスタッフもおりました。きちんとお手入れをすると、15年以上も美しい姿を保つことが出来るのですね。
タオルハンカチでも人気の「エレガントローズ」は、日傘にもなったレースです。金糸の輝くレースは、シンプルながらも上品で存在感が抜群。作成したのはもう8年前ですが、いまでも変わらず素敵に見えませんか?
全面的に柄生地の日傘に挑戦したこともございました。ポップな柄が、一線を画すデザインです。この日傘をさして、お祭りにいきたくなるような浴衣にぴったりのデザインでした。
「ギュピールレース」は、特別な不織布のような生地を貼り付け、その上に刺繍を行っていきます。不織布を溶かすと、レース部分のみが残り、立体的なレースに仕上がるのです。
レースの隙間から日の光がとおると、影まで美しく思わず見惚れてしまうほど。あえて日差しの強いところを通りたくなるような、夏の日差しをお楽しみいただけるデザインです。
ここ数年は、タオルハンカチでも人気のお花のレースを施した日傘が人気でした。日傘のレースもバイカラーになり、より一層レース日傘ならではの、美しさをお楽しみいただけるようになったのではないでしょうか。
日傘にぴったりのオリジナルレースを生み出すために、職人さんも交えて、どうしたら強くて美しい傘が出来るか、企画段階から一緒にものづくりを行っています。機能性はもちろんのこと、レースがおりなす美しさをいつも感じていただけるよう、携わる方々の思いを込め、時間をかけて丁寧に仕上げています。
今年は、シックでエレガントな「カラーリリー」が登場。レースの透け感も程よく、涼感のある仕上がりとなりました。生地色とレースの色との相性がぴたりと合い、どんなスタイルにも合わせやすく、気品ある日傘です。
また、「アールデコ」はこれまで最多登場の人気のレースです。はじめの登場は2009年。そこから、ショート日傘や、折日傘などにも使用され、今年もカラーリングを変えて登場いたしました。広幅でとても繊細なレースは、こちらも地面に映るレースの影が美しいと評判です。
時を経ても変わらぬエレガントさに、今期はホワイトレースで爽やかさをプラス。ブラウンとホワイトのコントラストが素敵。シックなモカ茶色は、お洋服にも、和装にもぴったりの上品なたたずまいです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、近沢レース店の歴代の日傘についてご紹介いたしました。 これまで長く日傘を取り扱ってまいりましたが、毎シーズン、どのような日傘がお客様にお喜びいただけるか、試行錯誤を繰り返しながらものづくりを行っています。
日傘も基本的にはその時限りのデザインであることが多く、スタッフそれぞれお気に入りの日傘を楽しんでいるようです。お客さまからは「日傘を買いたいけれど、ずっと迷っている」というお声も耳にいたします。
ぜひ、みなさまにとってのお気に入りの一本が見つかりますように。そして、長くご愛用いただけますと幸いでございます。