近沢レース店の商品デザインはどうやって決めているの?専属デザイナーにインタビュー!

片岡さんインタビュー

近沢レース店では毎シーズンごとに新しい商品をお届けしています。私たちが主に取り扱っている、ハンカチやバッグ、アパレルなどの商品は、日常的にお使いいただくものが多く、どのようなデザインにするかというのは商品開発においても大切なポイントになります。

世の中のトレンドや使用シーン、お客さまの好みなどを踏まえ、どのようなデザインにしたらレースをより身近に楽しんでいただけるだろう?と考えながら、日々試行錯誤しています。

今回は、企画部所属のデザイナーへインタビューを実施。近沢レース店の商品デザインの魅力や、デザインはどのように決まるのか、商品デザインに対するこだわりなどを教えてもらいました。 宜しければぜひ、ご覧くださいませ。

——どういった経緯で近沢レース店に入社されたのですか?

片岡さんインタビュー

実は前職で近沢レース店の商品デザインに携わっており、当時から近沢レース店のことは知っていました。打ち合わせに参加すると「一緒に考えているひとときが、とても楽しいな」と思うことが何度もありました。

その後、転職を考えた時に、近沢レース店でデザインの仕事に参加出来たらと思い、思い切ってコンタクトを取ってみたのです。確か、かなりアナログなお手紙だったと思います(笑)

あのときは当たって砕けろ、の覚悟でした。縁あって採用していただけることになり、いまは企画部に所属して衣料品全般のデザイン担当をしています。

——近沢レース店の商品デザインはどのようにして決まりますか?

片岡さんインタビュー
スタッフの休憩ルームには、いつも身近にレースラックが置いてあります

まずは企画部でミーティングを行い、次のシーズンに向けてどんな商品を作ろうかと話し合います。

最初は「こういう商品をお客さまに使っていただきたいよね、持っていただきたいよね」とざっくばらんに話しながらアイデアを出していきます。

そこから徐々にイメージを膨らませていき、方向性がまとまったら営業を交えたキックオフ会議を開き、「次のデザインのテーマはこれで、商品ラインナップ数はこれくらいでいきたい」と伝え、了承を得られたら試作に進んでいきます。

片岡さんインタビュー
世界中から、たくさんのレースが集まります

当社では毎年、春夏と秋冬の展示会を開催しているので、そのタイミングにあわせて商品化を進めていくイメージです。

最初のミーティングでは“肌感覚”を大事にしています。当店のお客さま層は20〜40代の女性がメインですが、数字やデータだけを見て「20代の方にはこういった商品が人気だろう、40代の方にはこういう商品が求められているだろう…」と、決めつけては良いモノづくりができないと思うのですよね。

実際、40代の方に向けて作った商品でも、いざ販売してみたら幅広い年代のお客さまが手に取ってくださったという事例は少なくありません。ヤングミセス向けに作ったつもりだった商品が、マダム層の方から注目されたこともありました。
年齢や属性の枠にとらわれない商品づくりを目指しています。

——ひとつの商品デザインが決まるまでの流れを教えてください。

片岡さんインタビュー
2024年発売:「ジャルダン/ミニショルダーバッグ」

商品によっていろいろなパターンがありますが、今回はバッグのデザインが決まるまでの一例をお話ししますね。

レースは社内にストックがありますが、年に2回、テキスタイルの展示会でもピックアップします。ものづくりって不思議なもので、レースが語りかけてくるというか、アピールしてくるんですよね。「私をつかって~!」みたいな感じです(笑)

「去年はこのレースを取り入れようと思わなかったけど、いま見るとこのレースって新鮮で素敵かも」といった感じですね。

「だったら今年はこのレースをバッグに取り入れてみよう」と話が始まると、次に「じゃあこのレースの良さを引き立てるにはどういう形のバッグがいいかな?」と話が膨らんでいきます。

ここからは個々の担当者の腕の見せどころです。丸い形か、角張った形がいいのか、バッグのかたちを決めていきます。形が決まったら「ファーと組み合わせるなんてどうだろう?」といった具合に、さまざまな組み合わせを考えながら全体の雰囲気を仕立てていく、というのがひとつの流れです。

デザインや耐久性に凝るのはもちろんですが、あくまでも“レースが映えるように”考えています。
主役はレースであり、なにより大切なのは「お客さまにレースの魅力を知ってもらうこと」ですから。

——ひとつのデザインが決まるまでどのくらいかかりますか?

片岡さんインタビュー
2024年2月シーズンタオルハンカチ:「春摘みいちご」・「桜餅」

最初のミーティングからデザイン決定までにかかる期間は3ヵ月半くらいです。秋冬の展示会に出展する商品であれば、11月の後半くらいから考え始めて、決定が3月末あたりになります。

けっこうタイトに聞こえるかもしれませんね。でも、デザインっていうのはズルズルと引っ張るのもよくないのです。

デザインは“なまもの”なので、あまり時間を掛けすぎてしまうと腐ってしまう場合もあるんですよ。
「時間をかけたからといって、いいものができるわけではない」というのが私たちの持論です。フレッシュ感や、新鮮さを大事にしている私たちにとってはこの約3ヵ月というスパンがちょうどいいのだと思います。

——商品デザインを途中で大きく変更したり、制作を中断したりすることもあるのでしょうか。

リヨン
世界に現存する8台しかないレース機械で作られた、「長日傘/リヨン」。希少価値の高いフランス製のレースを使用した、贅沢で豪華な秀逸品。

ありますよ。たとえばアパレルの商品デザインを考えるとき、すごく気に入ったレースがあって「これをどうしても洋服にしたい!」と思っても、レースゆえに縫製がうまくいかずに断念するとか。

レースは織物なので、網目がありますよね。網目が大きく大胆なレースほど印象的で素敵なのですが、縫製がしづらいのです。

無理に商品化したとしても、すぐほつれたり破れたりしてしまえば、結果的にお客さまにご迷惑がかかってしまいます。
そのため「このレースを使いたいけど、商品化はちょっと難しいね」と、泣く泣く諦めることは少なくないですね。

とはいえ、せっかく作り始めたものを途中で諦めるのはつらいですね…。だからこそ、できるだけそういった事態にならないよう、デザインでつまずいたり迷ったりしたときは早めにチームのメンバーに相談するようにしています。

——商品デザインを決めていく中で、こだわっていることや気をつけていることはありますか?

片岡さんインタビュー

「レースは高価なもの」という固定観念が強いのか、レースに対して「自分にはちょっとハードルが高い」と思っている方はとても多いのです。でも私は、レースは誰でもそれぞれの似合わせ方があると思っています。

レースって綺麗だな、可愛いなと感じる気持ちは、多かれ少なかれ誰にでもあると思うのです。私たちはそれを少しでも気付いていただけるような、ワクワクする商品をお届けしたいと考えています。

「レースは特別なものではなく、日常的な毎日に彩りを加えるもの」という価値観が当たり前になる未来をつくれたら嬉しいですね。

——ご入社されてから、近沢レース店のお客さま層や商品デザインのコンセプトに変化はありましたか?

片岡さんインタビュー
2024年発売:「ハッピーレースベビースタイ」

そうですね。近年は、当社のタオルハンカチを手に取ってくださる若いお客さまが増え、お客さまの層もどんどん変わってきました。ありがたいことに、SNSで紹介してくださる方もたくさんいらっしゃいます。
私たちとしては、これをきっかけにもっと私たちのブランドを好きになっていただきたいですね。

レースが年齢を問わず広がって、赤ちゃんや幼稚園のお子さまも使えるようなレースの商品も積極的に作れないかと考えています。未来の近沢レース店ファンに向けて。ね。

その次は、男性向けになにか商品を開発できないかなって。近頃はメンズコスメ市場も拡大していますし、髪型や服装も多様化しているでしょう?
たとえば男性がレースのハンカチを持っていても、まわりの人は「あ、可愛いハンカチだね」と受け入れてくれるような。

男性にとってのレースがスタンダードになるのは難しくても、準スタンダードくらいにはならないかなと思っています。

女性向けのレースアイテムは数え切れないほどあります。だからこそメンズをはじめとした、まだそこまでレースの存在が浸透していない領域に手を伸ばして、なにかおもしろい提案ができないかなと考え始めています。

——これまで手掛けてこられた商品デザインで印象に残っているものや、お気に入りのものはありますか?

片岡さんインタビュー

思い入れが深いのは、「イニシャルレースチャーム」と「グリーティングレース」ですね。
イニシャルレースチャームは、商品名のとおりレースで作った小さなアルファベットのチャームです。普段使っているハンカチのレースや、ボタンホールにちょっと引っ掛けて使うことでさり気なくレースを取り入れていただけます。

ご自身のイニシャルを選んだり、好きな有名人やキャラクターのイニシャルを買ってカスタマイズするといった使い方ができるアイテムです。

グリーティングレースは、レースで「Happy Birthday」「ありがとう」といった言葉をデザインに編んだもので、贈り物のメッセージとして添えたり、ハンカチや小物に縫い付けてアレンジしたりといろいろな使い方ができます。

レースをコミュニケーションのツールのひとつとして使うという、これまでになかった新しい使い方を提案できた商品です。ミーティングの中で「こういう商品を作ってみましょうよ」と声を上げ、商品化に至ったアイテムなので印象に残っています。

——企業向けに作られた商品で印象に残っているものはありますか?

片岡さんインタビュー

とある老舗ホテルに併設されたカフェで使用される、ランチョンマットを手掛けたことがありました。
納品させていただいたあと、実際にどのように使われているのか見たくてそのカフェに足を運んだのです。

片岡さんインタビュー

素敵なカフェ、そこで食事を楽しまれるたくさんのお客さま、その手元には当社が手掛けたランチョンマット。
あの光景を見たときは心が踊りました。みなさまの楽しいひと時に、近沢レース店の商品が彩りを添えているのですから。
感激したと同時に「また商品デザインをがんばろう」と気が引き締まったのを覚えています。

個人のお客さまに販売している商品は、実際にどう使われているかまでは分かりません。
だからこそ、当社の商品が実際に使われている光景を目にすることができたのは貴重な経験でした。

——お客さまに近沢レース店のデザインのどういった部分を楽しんでいただきたいですか?

画像サンプル

近沢レース店の商品を通じて、お客さまとそのまわりの方々との交流のきっかけにしていただけたら嬉しいです。

たとえばタオルハンカチを買ったお客さまがいたとします。まわりの人に「これ近沢レース店で買ったのよ」「こんな仕掛けがあって楽しいレースなのよ」と話したくなったり、「これを誰かにプレゼントしたい!」と思っていただける商品って、すごく素敵だなと思うのです。

新しいものを手にすると嬉しい気持ちになりますよね。その気持ちを誰かに伝えたくなるような商品を、これからもずっと作り続けていきたいと思っています。

いままでになかった切り口から新しいデザインを提案していきたいですね。
形になるのはまだまだ先かもしれませんが、やりがいは感じますし、いつか叶ったときの達成感はとても大きいだろうなと思います。