創業120年以上の歴史をもつ、近沢レース店のアイテムの変遷を辿る

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近沢レース店は明治34年に創業し、120年以上の歴史をもつ長い年月の中で、数え切れないほどのアイテムを取り扱ってまいりました。

時代の移り変わりとともに、ラインナップにも少しずつ変化が生まれ、現在みなさまにご愛用いただいているアイテムが登場するまでにもあらゆるストーリーが込められています。

今回は創業当時から現在に至るまで、どのようなアイテムを取り扱ってきたのか、当社・代表取締役社長の近澤 匡祐氏にその変遷を聞いてまいりました。

アイテムを通じて、絹の輸出商からリネンストアー、レース専門店へと展開していく近沢レース店の軌跡を辿ります。

——まずは、近沢レース店でこれまでどのようなアイテムを取り扱ってきたか教えてください。

当社は、絹の輸出商として創業し、その後横濱元町に居を構え、リネンストアーへと転身します。そのため、特定の商品を扱っていたというよりは、お客さまのご要望に合わせたオーダーメイドのものづくりが中心でした。具体的には、タオル、テーブルクロス、シーツ、ピロケース、ハンカチなどのインテリアが主力だったようです。

その後、先先代が百貨店へ出店すると、返礼ギフト市場にうまくハマったテーブルウェアが主力になりました。お客さまからもご好評で、百貨店の担当者にも非常に喜ばれていたようです。

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ドイツ/プラウエン地方の素晴らしい伝統技法。「ギュピールレース」のインテリア

時代が移り変わり、返礼ギフトよりも、贈る相手の想像がしやすいパーソナルギフトの需要が高まると、ファッション雑貨のシェアが増えていきました。
タオルハンカチのヒットもそういった背景が影響していると思われます。

——屋号でもある「レース」がアイテムに用いられるようになったのはいつ頃なのでしょうか?

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初めは、装飾の少ないものを作っていたようですが、外国人のお客さまからのご要望で、お品物に家紋の刺繍や、レースを施したものをお納めすることが多くなったといわれており、次第にレースをあしらったハウスリネンの専門店へと展開していきます。

戦時中の写真を見る限り、店頭にカットワークやバテンレースのテーブルクロスがおかれているので、このころには、レース専門店として確立していたのだと思います。

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現在は製造することの難しい。貴重な「カットワーク/テーブルクロス」

戦後は市場が、オーダーメイドから既製品に移っていくと同時に、当店も海外からレース製品を輸入していきます。

当社で保管されているものの中には、ニードルポイントレースやボビンレースなど、いわゆるレースの技法で作られた年代物の商品も残っています。いまでは作り手がいなくなってしまった貴重なアンティークレースもありますね。

それこそ、同じような商品ラインナップを取り扱っていますが、当時といまとでは、手作りか機械かという大きな違いがあります。

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世界的なレースの収集家、鑑定家であるダイアン・クライス氏が所蔵するコレクションから厳選した「アンティークレースジュエリー」

——ありがとうございます。現在のラインナップについても伺わせてください。現在はタオルハンカチ、中でも「シーズンタオルハンカチ」は熱狂的なファンも多い商品です。人気の秘訣はどこにあると思いますか?

デザインとコミュニケーションの融合だと思います。

シーズンタオルハンカチは、レースで季節を感じていただきたいという発想から生まれました。和菓子屋さんでいう、季節のお菓子のイメージですね。

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実際に和菓子モチーフのハンカチも発売。(2024年2月発売「桜餅」)

はじめは、桜の時期に桜のモチーフのレースをあしらったタオルハンカチでスタートし、春夏秋冬それぞれの季節を彷彿させる花モチーフを増やしていきました。

次第に、花柄から食べ物や動物、ことわざなどバリエーションが増え、レースの色も白一色から2色、3色のコンビネーションになっていきます。

見た目が素敵なことは必須条件、お持ちいただく方の気分を盛り上げ、会話のきっかけや、プレゼントの口上にしていただきたいという想いを込めてデザインしています。

モチーフを考えている私たちも、非常に楽しみながら盛り上がっています。シーズンタオルハンカチの選定会議は、絶対に時間通りに終わりません。
そんなわたしたちの楽しさも、お客様にも伝わっているのかなと感じています。

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選定会議でも盛り上がりをみせた「ビール」。(初回2021年8月発売/2021年、2023年、2024年再販)

因みに、レースは花柄のイメージが強いので、花柄以外をレースで表現することを驚く方もいらっしゃいますが、レースは300年以上前から、メッセージ性の強いモチーフが多く、一族の紋章が入っていたり、宗教的な意味をもつモチーフが組み込まれていました。中には、イソップ童話や有名絵画のトレースをしたデザインもあります。 レースがもつ、タレント性はいまも昔も変わらいのだと思います。

シーズンタオルハンカチの誕生秘話やこれまで販売してきた商品については、過去に公開したコンテンツで詳しく紹介しているので、そちらもご覧いただくともっと好きになっていただけると思います。

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——最近はシーズンタオルハンカチのデザインを揃えた商品も見かけるようになりました。

ハンカチをきっかけに当店を知ってくださった方々に、他の商品ラインナップも知っていただきたいと考えて、同じレースで横展開しております。

というのは建前で、せっかく作ったレースをハンカチだけ使うのは勿体ないという想いが強いです。 推しのキャラクターが複数のチャネルで活躍する姿を見たいファンの気持ちですね。

もちろん他の商品も実用性やデザインにこだわっていますので、まずはお揃いのシリーズとして使っていただくことで、タオルハンカチ以外の商品の魅力も知っていただけたら嬉しいです。

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きらきらの生地とレースが盛り上がる。「グリッター小物」(2024年11月:発売予定)

——これまでの商品で社長が気に入ってらっしゃるものはありますか?

私が、毎日愛用しているのは、リトアニアの麻を使った刺繍ハンカチです。吸水性と速乾性に加えて、ポケットに入れても嵩張らないのが好きです。
シンプルな刺繍なので、男性にもおすすめしています。

洗濯したあと、濡れたまま四折りにしてしっかりと四隅を伸ばしてテーブルなどにおいておけば、一晩で乾いて皺も気にならない程度になりますので、ケアも簡単。

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たっぷり水を含ませてから手アイロンをすれば、こんなに綺麗に

スーツを着るときは、汕頭刺繍のハンカチをTVフォールドで入れるのも好きです。
一見すると、白い無地のチーフですが、よく見ると非常に繊細な刺繍が施されているという、小さなこだわりです。

ベトナム製のアイレット刺繍のテーブルクロスもお気に入り。アイレットとは鳩の目を意味しており、ボタンホールステッチで輪郭をつくり、中の生地を目釘のようなもので穴を抜いていくのです。

ベトナムはもともとフランス領だったこともあり、刺繍やレースの技術が残っていました。このアイレット刺繍は白に生地に白い刺繍を施しているのが特徴で、派手さのないシンプルなデザインですが、ハンドメイドならではの迫力があります。
白に白刺繍なので、食器も選びません。和食器との相性も良いです。

生地もリトアニア産の麻を使用しており、経年劣化も少なく、汚れも落ちやすいですし漂白もできます。
テーブルクロスとしては、最高の品だと思っています。リネンストアーとしての自信作です。
残念なのは、職人が少なくなり新規の生産ができないことですね。

——今後、近沢レース店の新商品として挑戦してみたいことはありますか?

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「レースで五感を刺激する」に挑戦したいと考えています。
すでに視覚と触覚でレースを感じていただくことはできると思います。残りの味覚、嗅覚、聴覚でもレースを感じていただけたら素敵ですよね。

レースは糸と糸がより合わさってできた宝石と称されます。私たちは、そのレースでさまざまな模様やストーリーを表現し、それを他の素材と掛け合わせることでお品物を作ってきました。

今後は、レースで表現することに留まらず、レースそのものを使わずに、レースを世界観として表現することを模索していきたいです。
見て、触って楽しんでいただくことはもちろん、味わうことや、香ること、聴くことなど。五感すべてでレースを感じられる何かを提案していければと考えています。

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16世紀から20世紀初頭までに作られた「アンティークレース」

また、新しい挑戦というわけではありませんが、改めてリネンストアー近沢レース店らしさを追求していきたいです。

昔に比べて、テーブルウェアをお使いになる方は減ったと感じますが、家の中を飾るという文化は、形やアイテム変えて残っていくのではないでしょうか。

テーブルウェアにこだわらず、さまざまな切り口で家の中を彩る商品のご提案もしてまいります。

——最後にお客さまへメッセージをお願いします。

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私の考えるレースとは、素材の味を引き立てるスパイスのような存在だと思っています。
レースそのものも美しいですが、アイテムと融合することで、魅力の掛け算がはじまります。

そして、それらを身に着け、生活に取り入れることで、気持ちにも華やかな変化をもたらします。
その華やかな変化は、人から人へと伝播するものだと思います。

16世紀から人々を魅了してきたレースとその魅力を、あらゆる角度からみなさまさまにお届けすべく、私たちは、真剣に楽しみながらものづくりをしてまいります。
そんな想いが、私たちのレースを手に取ってくださる方々にも伝われば嬉しいです。