透明感が美しいベルギーのレース「プリンセスレース」
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- 2022.06.28.
花や葉っぱなどのモチーフがかわいらしい「プリンセスレース」。ベルギーのレースとして有名なプリンセスレースは、テープレースワークとして、数多くの素晴らしいデザイナーと、職人により作られてきました。しかし、現在ではデザイナーや職人の数も減り、貴重なものとなりつつあります。
今回は、プリンセスレースの歴史や特徴、当店が取り扱っている商品についてご紹介します。
(「プリンセスレースの歴史」、「プリンセスレースの特徴」監修:アンティークレース鑑定家 ダイアン・クライス氏)
プリンセスレースの歴史
レースは誕生以後、制作に多くの時間と人の手間がかかることから、ヨーロッパ王侯貴族たちのステイタスシンボル(社会的地位を示すもの)として存在していました。かつてレースは、高貴なクラスの女性だけが購入することのできた、高価で贅沢なアイテムだったのです。
1800年代の終わり頃、何度目かのレースブームが起こりました。貴族達のほかにも富裕な市民層をはじめ、ごく一般の女性達もレースを所有したがる時代になり、レースの需要が高まりました。そこで、新しいタイプのレースがベルギーで作られました。
そのレースが「プリンセスレース」です。「プリンセスレース」は、ボビンレースやニードルレースに比べると、比較的短時間で気軽にできるため、商業化できるレースとしてすぐに話題となり、広く人気のあるものとなりました。
プリンセスレースは、クラフトタイプレースであり、特殊な、編む・織るという手工芸というより、もっと手芸的なものになります。
プリンセスレースはほとんど内職で作られました。内職で作ることができるため、家庭内で作業をするレース職人にとって快適なものだったそうです。製作地域は、ベルギーのBrussels(ブリュッセル)近辺に集中しており、Dender(川)地域とよばれていました。
プリンセスレースが最も有名だった都市は、Aalst(アールスト)、Ninove(ニノーベ)、Geraardsberg(ヘラーズベルケン)、Liedekerke(リードケルク)でした。
当初はたくさんのプリンセスレースの卸売商が存在していましたが、次第に減少していきました。それでも1993年頃までは、まだ15件ものレース卸売商が残っていたのです。現在はさらに減少し、いつ職人さんがいなくなってもおかしくない状態となっています。
プリンセスレースの特徴
プリンセスレースは、テープワークレースとも呼べます。テープは波型模様を描き、そのテープで花・葉・軸といったモチーフを別々に作り、機械生産のチュールネットの上に針で縫いとめていきます。
各モチーフ(花など)の間には太糸ステッチが入ります。時々、機械でつくられたお花(ケミカルレース)が加えられることもあります。
各デザインの本体のかたちは、前もって量産されたものでなく、デザインによりチュールネットをカットして作っています。プリンセスレースのパターンデザイナーは、たびたびデュシェスレースの影響を受けました。
19世紀終わり頃、プリンセスレースが作られはじめた当初は、テープレースはハンドメイドのボビンレースを用いていましたが、後に機械生産のリバーレースを使うよう変化していきました。この繊細なリバーレースは、フランスのCalais(カレ)のみで生産されていました。
ベースとなる材料のチュールは、軽く透明感がありますので、洗礼のためのベビードレスやマンチュリア(教会でかぶるベール)、結婚式用のベールやハンカチなど、冠婚葬祭にとても適したものです。
プリンセスレースはリボンワーク(テープレースワーク)として、素晴らしい技術をもつデザイナーと、献身的な職人により作られてきました。ベルギーで最も一般的に知られているレースですが、現在では大変貴重なものとなりつつあります。
プリンセスレースは、ロイヤルレースとも呼ばれていました。
プリンセスレース ベール
ベルギー製のプリンセスレースのウェディングベール。裾や、纏ったときに顔まわりを彩る両端にテープで作られた何種類もの可憐な花・葉が散りばめられています。
プリンセスレースの透け感はベールに適しており、花嫁を華やかに彩ります。
近沢レース店ではワークショップを開催中!(不定期)
近沢レース店では、阿部 薫先生が教えるプリンセスレースのワークショップを開催しています。
阿部 薫先生は、日本で唯一と言っても良いプリンセスレースの研究者・製作者です。ご自分でアンティークの古いプリンセスレースをほどいて、パターンを研究し、現代にプリンセスレースの美しさと、作る楽しさを伝えていらっしゃいます。
ワークショップは少人数でじっくりと教えていただけます。
お教室といっても、雑談をしながらの和気藹々とした雰囲気。1年間かけて作品を作られる方もおります。
プリンセスレースが流行した19世紀に思いを馳せながらレースに向き合うことは、何にも替え難い贅沢な時間です。
参加者の声
- じっくりと1年間かけて、プリンセスレースのハンカチを作成するのは達成感があります。
- 当時のレース職人に思いを馳せる、贅沢な時間が過ごせました。
- ワークショップには長らく通っている方もいて、レースに向き合う奥深さを感じることができます。