2026年の干支「午(馬)」はどんな年? 馬が縁起物とされる理由
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- 2025.11.20.
新しい年を迎えると、年賀状や、正月飾りなど、干支をモチーフにしたアイテムが目に入ります。干支は、自然の巡りと暦のうつろいを理解するために生まれ、人々の暮らしに深く溶け込みながら、その年の歩み方を示してきた指標のような存在でもあります。
2026年の干支は午(馬)です。馬という動物には、古くから暮らしを支え、文化を形づくり、人々の願いや祈りを運んできた歴史があります。ものすごいスピードで駆け回る姿から、前へ進む力や、新しい未来への希望を重ねることができるため、長く縁起の良い存在とされてきました。
今回は、干支の背景から馬がなぜ特別な意味を持つのかまでを辿りながら、午を迎える一年へ気持ちを寄せられるような情報をお届けします。
干支とは?暦とともに育まれてきた「十二支」の文化
私たちがよく知る「子(ね)、丑(うし)、寅(とら)・・・」という十二支の並びは、もともと動物を意味するものではありませんでした。古代中国で生まれた十干と十二支は、季節の巡りを読み解き、自然との調和を保つための暦として用いられていたものです。
農耕を中心とした暮らしでは、季節の動きを知ることが生活を守ることに直結していました。春の訪れ、雨の兆し、種まきや収穫の時期を見極めるために、自然の変化を記号化した干支が役立てられたのです。
やがて十二支に動物があてはめられるようになり、抽象的だった記号が人々にとって親しみやすい象徴となりました。繁栄の象徴とされる子、忍耐強い丑、俊敏な寅。動物たちの個性を借りることで、十二支は「その年の空気を伝える象徴」として浸透し、年始の贈り物や祈りにも自然と用いられるようになっていきました。
今日まで続くこの文化は、季節と調和しながら生きてきた人々の知恵が、形を変えながら受け継がれてきたものだといえるでしょう。
馬(午)=縁起が良いとされている理由
干支の中でも午は、特に勢いのある年、前向きな動きを生む年として知られています。しかし、馬が縁起物として扱われる理由は馬の特徴に由来するだけではありません。
背景には、長く人の暮らしに寄り添い、支え、希望を運んできた歴史があります。
ここでは、馬が吉兆の象徴として愛されてきた理由を、5つの視点から読み解きます。
馬が暮らしを支えてきた歴史
自動車や機械が存在しなかった時代、馬は生活を動かす力そのものでした。遠い土地へ向かう旅も、重い荷物を運ぶ日々の仕事も、土地を耕し、生活を切り拓く営みも、馬とともに行われてきました。
馬はただの動物ではなく、人の暮らしを前へと進めるための大切な存在だったのです。人々はその力に支えられ、生活の範囲を広げ、新しい土地へ足を運び、仕事を広げていきました。
そのため、馬の姿には自然と「前に進む力」や「飛躍」のイメージが宿るようになりました。大地を軽やかに駆ける姿は、目の前の世界を広げ、新しい未来へと導いてくれる象徴と受け取られてきたのです。
富と繁栄を象徴した理由
古代社会では、馬を持つこと自体が豊かさの証でした。馬の飼育には広い土地と資源が必要であり、馬を所有できる家は、それだけの力を持つ家でなければならなかったのです。
馬がいれば、荷物を運ぶ効率が上がり、農作業は捗り、遠方の土地との交流が活発になります。結果として仕事や商いが発展し、人とのつながりも増えていきました。
暮らしの豊かさは、馬によって大きく支えられていました。そのため馬は「繁栄」や「成功」を象徴する動物として扱われ、縁起物として選ばれるようになったのです。
神聖な存在としての馬
日本各地の神社には、神さまの使いである「神馬(しんめ)」が祀られている場所があります。白馬は特に神聖視され、清らかな存在として扱われてきました。古くは祭礼の場で馬が奉納され、神事の中でも重要な役割を担いました。
また、旅の安全を願う「馬頭観音」の信仰は、今も全国に残っています。旅人が安全に帰ってこられるように。あるいは、道中で起こる災いから身を守ってくれるように。馬は人々の祈りを受けとめる存在でもありました。
力強さとしなやかさをあわせ持ち、まっすぐに駆ける姿は、どこか神秘的であり、畏敬の念を抱かせるものだったのでしょう。そうした象徴性が、馬を神聖な守り手として根付かせていったのです。
旅・良縁・安全を司る存在
現代でこそ交通手段は多様化しましたが、かつての旅は馬とともにありました。人々は、馬とともに旅をするなかで、新しい仕事に出会い、人との縁を結び、生活を広げていきました。こうした経験から、馬は「良縁」や「安全」を象徴する存在として大切にされるようになったのです。
旅人が絵馬に祈りを託したり、馬を模した縁起物を身につけたりする風習は、こうした背景があるのです。
世界の馬信仰
馬が縁起物として扱われているのは日本だけではありません。世界の文化を紐解くと、馬は「光」「豊穣」「自由」「勝利」など、明るい象徴を持つ存在として描かれてきました。
ギリシャ神話では、太陽神アポロンが馬に引かれた馬車に乗り、天空を駆けて世界に光を届けるとされています。光そのものを運ぶ存在として、馬が描かれているのです。
ケルト文化でも馬は豊穣と守護の象徴とされ、エポナという女神が馬とともに描かれました。西洋の宮廷文化においても、優美な馬は高貴さと誇りを象徴し、紋章にもたびたび使われています。
中央アジアの遊牧民族にとって、馬は生活と不可分の存在であり、自由と生命の象徴でした。
文化を越えた馬の逸話をみると、世界中で希望や繁栄を運ぶ象徴として愛された動物であることがわかります。午が縁起の象徴とされるのは、長い歴史の中で培われてきた普遍的な感覚でもあるのです。
午年が「勢いのある年」とされる理由
干支には、それぞれが象徴する「気」があるとされます。午はその中でも陽の気が強く、成長や発展の象徴とされる動物です。
馬が持つしなやかな脚、広い視野、力強い体、そしてまっすぐ前へ向かう性質は、新しい挑戦を後押しするイメージと結びついてきました。
そのため午年は「何かをはじめるのによい」「気持ちの切り替えに向いている」といった前向きな意味が込められることが多いのです。
もちろん、干支がその年のすべてを決定するわけではありませんが、「今年はこうありたい」という想いを形にしてくれる存在として、干支は長く愛されてきました。
午年でない人であっても、馬の象徴がもつ前向きな意味は、日常の中でそっと力を与えてくれるでしょう。
午(馬)のモチーフを日常に迎える
馬が縁起の良い動物とされてきた理由を辿っていくと、その意味は干支の年だけに限らず、日々の暮らしの中でもそっと寄り添ってくれるものだと感じられます。
馬は昔から「前へ進む力」や「明るい方向へ導く存在」と考えられてきました。だからこそ、忙しい毎日のなかで気持ちを整えたいときや、新しい挑戦に踏み出したいときに、馬のモチーフには不思議と前向きな気分にしてくれる力があります。
レースのようにやわらかな素材で午(馬)を表現すると、その強いイメージに、どこかしなやかさや優しさが加わります。糸が重なって生まれる模様には、光を受けて浮かび上がるような美しさがあり、見るたびに気持ちが和らぐような上品さがあります。
「縁起物」というと特別な日のためのもののように思えますが、日常にそっと置いてみると、気負わず、心地よく楽しめるものです。
午(馬)のモチーフは、自分の気持ちを穏やかに整えたいときにも、新しい一年に向けて小さな願いをこめたいときにも寄り添ってくれます。誰かの門出をお祝いするときにも、ほどよく意味があり、押しつけがましくないので贈りやすい存在です。
午(馬)の持つやさしい力を、日々の中でもさりげなく楽しめたら素敵ですね。
まとめ
干支は、自然の巡りとともに生きてきた人々の知恵が形になった文化です。十二支の一つひとつに意味があり、そこには長い歴史と祈りが息づいています。
馬という動物は、その中でも特に前へ進む力を象徴する存在です。暮らしを支え、心を動かし、祈りを受け取り、時には人と人をつなぐ。そんな役割を担いながら、時代を越えて人々の希望を運んできました。
来る一年が、皆さまにとって穏やかで、美しく、実りある時間になりますように。レースの模様がそっと日常を彩るように、午(馬)のモチーフが力となって一年を見守ってくれますように。それぞれの暮らしに、小さな幸せが訪れることを願っています。